成年後見


▶成年後見制度とは

少子高齢化社会といわれる現代は、認知症や知的障害、精神障害などの理由で、自ら不動産や預貯金などの財産管理ができなくなってしまう方が増えているという現実があります。
こういった判断能力の不十分な方を保護する制度として、平成12年4月に「成年後見制度」がスタートしました。介護が必要であれば介護サービス契約の締結や施設への入所契約、そのための資金として所有不動産の売却等が必要であればそれらの売買契約、住宅リフォーム詐欺など不当な契約の取消し、要介護認定の申請行為など、本人に代わって財産管理のみならず身上監護に関する様々な法律事務を行うのが成年後見業務です。
成年後見業務は、司法書士法29条1項1号の法令で定める業務として、「当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務」(司法書士法施行規則31条2号)として、全ての司法書士が行うことができる業務です。

▶制度を支える理念

後見制度においては「ノーマライゼーション・自己決定の尊重という理念と本人の保護の調和」が求められています。
そのため、単に財産を管理するに止まらず、本人の生活を支えること(身上配慮義務)が後見人の役割とされています。本人の保護という側面もありますが、本人の残存能力を活用し、自己決定権を尊重した運用が求められます。

無駄遣いのないようにがっちり管理するのではなく、本人の望み・希望を叶えるために、本人のために有効に財産を使うということも必要です。

▶司法書士は成年後見制度の担い手として関与率NO. 1

様々な事情により親族が後見人になるのが適さない場合には、司法書士・弁護士・社会福祉士などの第三者として専門職が後見人に選任されます。親族以外の第三者が後見人に選任されるケースが年々増加しており、令和4年は全体の約80.9%に達しています。その中では司法書士が選任されるケースが一番高くなっています。成年後見制度のスタートとともに、司法書士がいち早く社団法人として全国組織を設立し、積極的に取り組んだことから、他の士業と比べ高い選任件数となったのです。

▶当地域の実情

しかしながら、当地域の司法書士は他の業務で余裕が無く、社会福祉士が後見人に選任されるケースが圧倒的に多い実情にあります。当事務所については、現在受任中の案件は法的に困難案件ばかりで、解決後はできるだけ社会福祉士等にバトンタッチして、次の困難案件のために余力を残し、また、地域後見の進展のために、市民後見人の養成や運営会議等に関与するなどして陰ながら支援することを目指しております。

▶公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート

高齢者・障害者の権利を擁護することを目的として、日本司法書士会連合会が中心となり、社団法人成年後見センター・リーガルサポートを平成11年12月22日に設立しました。司法書士を正会員とする全国組織です。平成12年4月の成年後見制度スタートに先駆けて、いち早く設立されました。社団法人成年後見センター・リーガルサポートは、後見人としての倫理や法律・医療・福祉等幅広い後見に関する知識・技能を身に付けるための研修、会員の行う成年後見業務の指導監督、成年後見制度の調査・研究、成年後見制度の普及活動などを行い、司法書士がその担い手として活躍できる環境をバックアップしています。平成23年4月1日にリーガルサポートは公益社団法人に移行しました。

▶信頼関係の構築・社会経験が要求される仕事

他人の財産を管理することになるため、成年後見業務は家庭裁判所の監督下で行うとはいえ、「この人になら財産を預けても大丈夫」と思える位の信頼関係の構築が重要です。公益社団法人リーガルサポートの会員司法書士なら安心と言えます。
「法定後見」は、判断能力が衰えてからの制度です。
一方、「将来、そのような状態になった時に備えて」ご本人が元気なうちに契約を締結しておく「任意後見」では、サポートが必要になった時には契約をした司法書士が管理することとなります。そのために、ご本人と財産状況の確認や将来のご希望等をうかがっておきます。これにより、将来、そのような状況になった場合にどうしたいかを事前に確認しておくことで、いざという時にもご本人の希望に沿ったサポートが実現できることとなります。そのため、判断能力が低下するまでの間も定期的に面会するなどして、財産状況や要望の変化などをおうかがいし、法的な相談に応じる「見守り契約」を結ぶことが多いです。
また、成年後見業務では、ご親族などから依頼があることも多いため、ご親族との信頼関係も重要です。他人の財産管理をすることになる以上、強い信頼関係の構築と高い倫理観が必要となります。
→後見申立の手続

▶依頼者の人生に触れる仕事

継続的なお付き合いになり、場面に応じて様々なサポートが必要となる仕事ですが、ご本人やご親族をはじめ多くの方とさまざまなお話を重ねることとなります。過去の生い立ちから将来設計にわたってお話をうかがうことにより、逆に多くのことを教わることもあります。
また、判断能力が低下された方であっても、その状況は人によって違い、同じ方でも日によって異なることは多く、その時々に応じたサポートも必要になります。司法書士はそのご意向を汲み取った上で、かつ客観的な判断も求められるため、大変ではありますが、やりがいも大きいものです。
成年後見では、多くの手続きが必要となりますので、それらの手続きを進めながら、ご本人やご親族の方と面会を重ねていくことになります。そこからその方の特徴やご意向を汲み取って、形式的でないサポートが必要となるのです。
→後見申立の手続