戸籍謄本等の収集・法定相続情報証明

相続手続きには登記のほかにも様々な手続きがあります。
司法書士は各手続きのゴール地点を見定め、一体として進行させることで進捗状況も把握しやすくなり、無駄を最小限とするように進めていきます。

業務内容
相続人の調査・確定のために必要な戸籍等の収集
相続関係調査
相続関係説明図の作成
法定相続情報一覧図の作成・法務局への申請代理

▶戸籍の集め方

戸籍を集める目的は相続人の調査・確定のためとなります。

戸籍を集める手順(父が死亡した場合の例)
最初にご自身の戸籍をとります。次に、被相続人(父)の出生から死亡までの戸籍をとります。ご自身が結婚すれば、父の戸籍は自分の戸籍ではなくなりますから、理由がなければとれません。そのため、ご自身が相続人だということを市町村役場に証明しなければなりません。ご自身の戸籍には父の名前が普通は載っています。これにより、今回の請求は相続人の立場からしているということが分かることになります。事案によっては別の戸籍も必要になります。

戸籍は本籍のある市町村役場にありますが、ご自身の本籍が分からなくなった場合は、ご自身の住民票をとって調べます。「本籍の記載あり」で請求する必要があります。
次に、ご自身の本籍地の市町村役場で戸籍をとると、おそらく、父の本籍が書いています。書いていない場合は、自分の戸籍を過去にたどってとる必要があります。
さらに、市町村合併後の市町村の調査をして、これでようやく、被相続人(亡くなられた方)の本籍を請求する市町村役場が分かる、ということになります。

さて、被相続人の現在の本籍地が分かったので、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をとります。その市町村役場の窓口に直接出向くか、郵便にて請求します。その市町村役場で全部そろわない場合は、過去の本籍をたどって、その本籍地の市町村役場に請求します。

次に、自分の母と兄弟姉妹の戸籍をとります。母の戸籍は父の戸籍の中に含まれているのが普通ですから、同じ戸籍を重ねてとる必要は通常はありません。なお、兄弟姉妹の戸籍は、基本的にご自身が取ることは出来ません。戸籍謄本(全部事項証明書)を取ることが出来るのは、その戸籍に載っている本人以外では、配偶者、直系尊属、直系卑属だけです(戸籍法第10条)。郵送で請求しても返されます。この場合、司法書士に依頼すれば、職権でとることが出来ます。

▶郵便での戸籍の請求のやり方

以下の「書類」を封筒に入れて郵便で送ります。
1.交付申請書
2.返信用封筒(通常よりやや大きめのもの)と返送用の切手
3.本人であることを確認できる書類のコピー
4.請求したい方とのつながりの分かる戸籍のコピー
5.手数料として郵便定額小為替

1.交付申請書
それぞれの市町村役場の交付申請書をインターネットでダウンロードすると便利です。難しければお手持ちの用紙に記入していただいても構わないでしょう。
【記載していただく事項】1.必要とする戸籍の本籍、筆頭者の氏名(抄本の場合は、対象者の氏名も)2.請求される方の住所、氏名、続柄(関係)3.使用目的(必須)4.請求者の連絡先(昼間でも連絡可能な電話番号等)
2.返信用封筒と切手
返信用封筒には、切手を貼って送ります。
請求する戸籍の通数によって郵送料が変わってきますので、一定の額になりません。
「不足分受取人払い」は本来認められておらず、役所が違法なことはできませんから、不足の場合はたった数円の切手でもその分の切手を送るよう連絡があります。
役所の担当者によっては、たったそれぐらいでと不親切に感じられるのを恐れ、差出人を書かないで出してしまえば、郵便局は送るしかありません。ですが、役所が出したことはだいたいわかります。日常的にこれを行っていれば、郵便局から慎むように言われ、差出人の役所に戻されます。やはり、ダメなことを役所がやってはいけません。
「不足分受取人払い」は、あうんの呼吸で行われていることです。郵送料に不足があれば余計な手数と費用がかかりますし、役所にも迷惑(手数をかければ人件費等の行政コストにはね返ります)をかけますので、細かい切手を多めに入れて、余ったら返してもらうようにしてください。ピッタリの額にならない場合は、金額がオーバーしてもよいから送った切手で対処していただくよう、その旨を書いたメモも入れます。
3.本人確認ができる書類のコピー
請求している方が誰であるかを市町村役場に伝えるための書類です。免許証のコピー、パスポートのコピー、マイナンバーカードのコピーなどです。これらの書類がない場合、どのような書類で代用できるか、それぞれの市町村役場に電話にて相談します。
4.請求したい方との繋がりの分かる戸籍のコピー
戸籍謄本(全部事項証明書)を取ることが出来るのは、その戸籍に載っている本人以外では、配偶者、直系尊属、直系卑属だけです(戸籍法第10条)。この関係にあることを証明できる戸籍謄本のコピーを同封します。兄弟・姉妹・甥姪などの戸籍謄本は取れませんから、兄弟・姉妹・甥姪に役所に出向いてとってもらい、送ってもらいます。これがいつまでもなかなか集まらず、その間、ヤキモキするものです。司法書士に依頼すると職権で速やかにとれます。
5.郵便小為替を買える時間
手数料の支払いは郵便定額小為替を送ることになっています。現金を普通郵便に同封することは違法です。厚紙に小銭を挟んで送っても気づかれますし、むしろ確信犯とみなされてしまいます。
郵便定額小為替は、午後4時までしか買えません。
6.必要な郵便小為替の金額
どの種類の戸籍を何通請求するかによって定額小為替の額は変わります。
その市町村役場に、戸籍、原戸籍、除籍がどこまであるか(その方が戸籍を動かしている、転籍されていることもあります。)は、請求してみないと分からず、電話では教えてくれません。とりあえず750円分の郵便定額小為替を送って郵送してもらい、戸籍の内容を読んで「古い戸籍」があることが分かったときは、再度郵便で請求します。
ただし、戸籍の附票や住民票の手数料は市町村によって異なります。150円、200円、300円、350円、400円など、まちまちです。
7.請求先の市町村の調査
戸籍に記載された本籍は、市町村合併や町名変更などで現在の市町村名と違っている場合が多いので、自分で調べます。適宜の市町村役場に電話で聞いても、他の市町村のことは正確に分かりませんので、調べて教えてもらえるとは限りませんし、回答が誤っていることもあるので注意が必要です。回答が誤っていたために郵送料が無駄になったと苦情を言っても、郵送料は返してもらえません。そもそも、旧字を手書きしているために本籍地の判読が難しい場合もあります。
インターネット等で調査した後、戸籍を置いてある市町村役場に電話で確認して間違いがないかを確認した方が良いでしょう。請求先を間違った場合はそのまま返送されてしまいますので、郵送料が無駄になります。転送を頼んでもしてくれません。
8.郵便小為替の手数料
郵便定額小為替は、1枚につき200円の手数料がかかります。定額小為替は50円、100円、150円、200円、250円、300円、350円、400円、450円、500円、750円、1000円の12種類があります。50円の定額小為替を手に入れるには250円必要です。
使用期限は6か月ですので、期限が切れれば換金または再発行(手数料200円)してもらいます。
いつまでも手元に置いておくわけにはいきません。
9.余分に購入した定額小為替の換金
手もとにある定額小為替証書には、郵便局に持参する前に、「上記の金額を受け取りました」とある下の「おところ」「おなまえ」の欄に、自分の住所・氏名を手書きして、印鑑を押します。
郵便局に出向いて窓口でよばれたときに、その記入済みの証書を、窓口担当のスタッフにわたします。しばらくすれば、現金を渡してくれます。
その際、窓口では、本人確認のために、身分証明になる書類の提示を求める場合もあれば、求められない場合もあります。


★これだけの手数がかかります

また、被相続人が死亡前にとった戸籍など、証明日の前後関係で使えない場合もあります。預金や自動車の相続手続きの場合は、新しくとったものでなければ認められないことがあったり、ケースバイケースです。
各手続きを最小限の回数で済ませるには、相続の事実を証明するということがどういうことなのかを正確に理解し、その具体例を洩れなく知る必要があります。
ご自身で手続きをする場合は、ひとつひとつ足りないと指摘されながら集めていけば、全部そろうでしょう。

さて相続の手続きでは、戸籍の原本を提出しなければならないところ、原本とコピーを提出し、手続終了後に原本を返却するところなど様々で、担当者によって異なることもあります。そのため、取り過ぎて無駄になることもありますが、最初から同じ証明書を多めに取り寄せるとよいでしょう。

▶法定相続情報証明制度について

法定相続情報証明制度とは、登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束と相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すると、法務局の登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付するもので、利用は無料です。この制度の利点は、法定相続情報一覧図の写しを利用すると、相続手続きで戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなるというものです。たくさん預金口座がある場合の各金融機関での相続解約手続きなどで活用できます。

何カ所もの金融機関で手続きをする場合、1つの金融機関の手続きが終わって戸籍を返してもらい、それから次の金融機関の手続きをしていたのが、同時に進めることができるようになります。

しかし、一つの金融機関(例えば郵便局)にしか貯金が無い場合、これまでは郵便局1カ所に戸籍の束を提出すればよかったのが、これに加えて法務局にも通うことになるので、むしろ手数が増えます。

法務局は、一点の曇りのない、特に厳格な審査をします。法務局が万一誤った法定相続情報一覧図の写しを交付し、これを信じた銀行が預金を誤って支払えば、国が賠償責任の一部を負うことになるからです。

▶ご自身で収集するか、司法書士に依頼するか

妻と子供2人の場合、最終的には6~8通程度の戸籍と、戸籍の附票1~3通と住民票3通の計10通~14通程度となることが一般的です。その他に相続人の数だけの印鑑証明書や、固定資産評価証明書なども必要となりますし、複数名が亡くなっていれば倍々になります。
お客様が取得する場合は次のようになりがちです。

1.どのような証明書が必要か司法書士から説明を受けます。ただし、「これこれをとれば1回で済む」と断言できません。なぜなら、ある程度取ってみないと、ほかに何を取ればよいか分からないからです。
2.市区町村役場に行って証明書を取得して司法書士事務所に届けます。
3.司法書士は不足分をお客様にお知らせします。司法書士が事務所にいて直ぐに調べてくれれば良いのですが、忙しかったり不在の場合は後日のお知らせになります。
4.不足分をお客様が市役所に出向いて取得し、また司法書士事務所に届けます。これを繰り返します。その他、市役所と交渉する必要があることがあります。

最初から司法書士が集めればお互いに効率的で無駄がないわけです。

▶相続関係調査 相続関係説明図・法定相続情報一覧図の作成報酬

当事務所では、戸籍謄本等の収集と相続関係調査、相続関係説明図・法定相続情報一覧図の作成は同時に行います。
相続関係説明図を見て法律的に誤りがないか、不足な戸籍はないかを点検し、不足があれば戸籍などを追加で収集します。
このように「単純に戸籍を収集するだけ」の作業ではないことをご理解ください