生前贈与

生前贈与をすると、生きているうちに財産をもらえるため、相続争いを防ぐ可能性が高いです。

▶夫婦間贈与「贈与税の配偶者控除」

「ご主人が亡くなった後で相続人同士に争いが起こり、奥様が住むところに困る」という最悪の事態を避けることができます。

次の条件を満たす配偶者からの贈与は、贈与税の配偶者控除(最高2,000万円+基礎控除110万円=合計2,110万円)を利用することにより、2,110万円までの財産の贈与についても、贈与税が課されずに名義を変えることができるのです。

●婚姻期間が20年以上であること(内縁関係は除く)
●贈与された財産が居住用不動産(家屋のみ、または家屋とその敷地)であること
●贈与を受けた年の翌年の3月15日までにその不動産に居住し、その後も引き続き居住する見込みであること
●同じ配偶者からの贈与について、この配偶者控除を受けたことがないこと。つまり、同一配偶者からは1回限りしか利用できません。

遺言との違い

●遺言の場合
「発見されない」「他の相続人が破棄してしまう」「死後、きちんと手続きを行ったか心配」などのリスクがある。

●生前贈与なら
ご主人が存命の間に名義変更の手続きが完了し、財産が確実※に相手に渡ります。
 ※ただし相続開始1年以内にした生前贈与は遺留分減殺請求の対象になります。

民法では、贈与してから被相続人が1年以内に死亡した場合、その生前贈与は「遺留分」の対象になるとされています。

被相続人の死亡した日から逆算して1年以内の贈与は遺留分の対象財産に含まれます。法定相続人以外への贈与も遺留分の計算の際の相続財産として含まれますので、注意してください。

デメリット

●『贈与税の配偶者控除』などで税額がゼロとなっても、名義変更(所有権移転登記)のための登録免許税(相続より高額)や不動産取得税(相続はゼロ)が発生します。

●税務申告が必要となります
※『贈与税の配偶者控除・相続時精算課税制度』などで税額がゼロとなる場合は、その規定の適用を受けるために申告書の提出が必要です。申告期限を1日でも徒過すると適用が受けられず、救済措置もありませんので確実に期限内に申告が必要です。

●住宅ローンが残っている場合は金融機関の承諾が必要となります。

▶子または孫にする生前贈与「相続時精算課税制度」

1人が年間で贈与税の基礎控除(非課税枠)の110万円を超える贈与を受けると、超えた部分に贈与税がかかります。これに対して、60才以上の人が20才以上の子または孫に贈与する場合に「相続時精算課税制度」を利用すると、2,500万円の贈与まで非課税となります。
将来相続税が発生しないような場合で、かつ、今のうちに多くの財産が欲しい場合には相続時精算課税制度は非常にメリットがある制度となっております。また、相続時の争いを避けるためという観点から、この制度によって、生前贈与という選択をとりやすくなりました。

さて、多くの方は、いずれ特定の子に不動産を引き継がせなければならないとお考えの場合、相続まで待つか、「相続時精算課税制度」を利用した生前贈与にするか、どちらが金銭的に得か悩むところです。一般的に相続を選んだ方がお得と考えられますが、金銭的にどちらが得か判断するのは難しく、個別の事情でも異なってきますので、細かなアドバイスは税理士にご相談をおすすめします。
ただし、相続時に争いが生じ親族間に修復できない亀裂が生じてしまえば、上記の金銭差を大幅に超える費用(精神的負担を含む)がご自分の死後に発生すると考えて間違いないと考えるべきです。